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曝気

曝気(ばっき)とは、読んで字のごとく、空気に曝(さら)すことです。金魚の飼育では主に、飼育水を空気にさらして、水中に酸素を供給することを指します。

酸素を知る

金魚は動物ですから、呼吸をします。酸素を体内に取り入れて、さまざまな化学反応からエネルギーを取り出し、使用済みとなった酸素を二酸化炭素として吐き出すことで、生活をしています。このあたりの仕組みは、私たち人間と、それほど変わりません。空気中の酸素を取り込むか、あるいは水中に溶けている酸素を取り込むか、の違いはありますが、どちらの場合でも、そもそも酸素が不足してしまえば、いくら呼吸をしても窒息して死んでしまいます。

こうならないように、水中に酸素を供給するのが曝気なのですが、これを考える前に、まずは酸素そのものについて見てみましょう。

 

酸素は高速で移動する

空気は、目に見えません。ですが、この空気を、どんどん拡大していくと、とても小さなツブツブの集まりであることがわかります。粒の大きさは、だいたい0.6ナノメートル(一千万分の6ミリメートル)です。このツブツブ10個のうち、おおよそ2個が酸素(正確には酸素分子)になります。私達が普段いる地上では、これらのツブツブが、ごちゃりと集まって、絶えず移動しているのです。

では、そのなかで、酸素の粒(酸素分子)は、どのぐらいの速度で移動しているのでしょうか。実は、平均的な酸素一粒あたり、一秒間に約460メートルの速さで飛び回っています。音の速さが、約330メートルなので、音速の約1.4倍という、途方もない速さです。

酸素の衝突ただし、酸素の粒は、地上で460メートルまっすぐに飛んでいけるわけではありません。試しに、あなたが460メートルまっすぐに走ることを考えてみると、よくわかると思います。たいてい、途中でなにかの障害物に衝突するでしょう。たとえば、部屋の扉であったり、家の壁であったり、外でも塀や木や車など、460メートルまっすぐに走るあいだに、衝突する障害物はたくさんあります。そして、酸素の粒にとって最も衝突しやすいのは、自分たちの仲間、つまり酸素を含む空気の粒です。酸素の粒は、平均して約70マイクロメートル(百分の7ミリメートル)で、ほかの空気の粒にぶつかります。

言い換えると、酸素の粒は、一秒間に約660万回も、他の空気の粒とコンキンカンと衝突を繰り返しながら、460メートル分の長さを飛び回っている、ということです。

酸素は水に溶けにくい

酸素分子と水分子では、酸素の粒(酸素分子)と、併せて水の粒(水分子)について、もうすこし細かく見てみましょう。それぞれ、右図のような構造をしています。

酸素の粒は、酸素原子二つがダルマのようにくっついたもの、水は、酸素原子一つと、水素原子二つから出来ています。分子や原子についての詳しい話は、この記事の目的から外れてしまいますので、ここでは掘り下げません。大雑把な性質については、酸素が、同じ種類の原子二つから出来ているのに対して、水は、異なる種類の原子が、ブーメランのように少しずれてくっついています。

この構造の違いのために、酸素に比べて、水の粒には、電気的にうっすらと+(プラス)になっている部分(図中のうっすら紫色になっている部分)と、−(マイナス)になっている部分(同じく図中のうっすら黄色になっている部分)ができます。ところで、この電気的に+と−になっている部分は、磁石のように互いに引き合う性質があります。このため、水の粒同士は、お互いにくっつきたがります。

参考までに、この電気的な偏りがあるために、水は「0℃から100℃という高く幅広い温度帯で液体を維持できる」「強力な表面張力がある」などの、低分子量の液体としては特異な性質を持っているのです。

これに対して、酸素の粒には、このような電気的な偏りがありません。この違いがあるために、酸素は水に溶けにくくなります。

酸素は水に溶けにくいもう少しわかりやすくなるように、水の粒が電気的に引き合う様子を、握手に喩えてみましょう。水の粒同士は、電気的に引き合う力があるので、お互いに握手ができます。握手といっても、通りすがりにポンと手をたたき合う程度の握手ですが、酸素の粒には、これができません。そのため、水の粒同士が作る仲間の輪に入れずに、外にはじき出されます。

ところで、水の粒も、酸素の粒と同じように、ある速さで動き回っています。この動き回る水の粒同士が、次々と通りすがりの水の粒と握手をして、握手ができない酸素の粒をはじき出して、を繰り返すことになります。この速さは、水温が上がるほど速くなります。 そのため、水温が上がるほど、酸素がはじき出される回数が多くなり、結果、酸素がますます水に溶けにくくなります

実際の数値としては、0℃の時の量(cc)に換算して、

水温 水1ccに溶ける酸素の量
0℃ 0.049
20℃ 0.031
40℃ 0.023

となります。

 

水面こそが曝気の要

酸素交換曝気とは、水を空気にさらすことです。では、空気にさらされた水、つまり水面では、どのようなことが起こっているのでしょうか。すでに述べた通り、空気中では、酸素は高速で移動し、衝突を繰り返しています。このうち、水面近くにある酸素の粒は、水面に衝突して、そのまま水中に入り込んでいきます。また、水面近くにあった、すでに水に溶けている酸素の粒のうち、水の粒からはじき出された酸素の粒は、ふたたび空気中に戻っていきます。

このとき、水のなかにある酸素の量が多ければ、空気中から水の中に飛び込む酸素の数よりも、水の中からはじき出される酸素の数の方が多くなり、水中の酸素は少なくなります。逆に、水のなかにある酸素の量が少なければ、出ていく量よりも、飛び込んでくる量の方が多くなるので、水中の酸素が増えますます

このことから言えるのは、なるべく酸素が少ない部分、つまり水面よりも水底に新しい水面を作り出してやることが、曝気のコツだ、ということです。

 

ブクブクそれでは、ここで、曝気で一般的に行われているエアレーション、通称ブクブクを見てみましょう。 右図の通り、エアストーンを水底に沈めて、そこから細かい泡を吹き出すわけですが、見ての通り、この作業で水底に新しい水面(泡)を作り出しているのがわかります。泡が水面に上がるまで、ほんの短い時間しかありませんが、すでに述べている通り、酸素は1秒間に460メートルも移動します。水底から水面まで、0.1秒しかかからなかったとしても、その間に酸素の粒は46メートルも移動できるのです。酸素の粒にしてみれば、泡は、止まっているも同然です。また、泡を細かくすることで、同じ量の空気でも表面積が大きくなるように工夫されています(詳しくは、最後の「おまけ:面積と体積」を参考にして下さい)。

さらに、泡が浮き上がることがきっかけで、水槽内の水が循環をはじめて、酸素を多く含んだ水が、水槽内の広い範囲に行き渡るようになります。

簡単な仕掛けのブクブクですが、曝気という観点からすると、驚くほど理に適った小道具である、ということがわかると思います。

 

曝気効果のある濾過装置

濾過の主役、濾過装置のなかには、濾過だけでなく、曝気の能力もあるものがあります。では、一体どのような仕掛けで、曝気効果を発揮しているのでしょうか。

 

外掛け式濾過装置

外掛け式濾過装置の曝気もっとも構造がわかりやすいのが、外掛け式濾過装置です。この濾過装置は、水槽の縁にかけて使用します。濾過の際の水の流れとしては、図中のAから水を取り込み、外掛けのタンク部分で濾過を行います。濾過後の水は、Bの部分から水槽に戻されます。

濾過装置そのものの仕掛けも簡単ですが、曝気がどのようにして行われているのかも、大変見やすいですね。前項で述べた通り、曝気をするべき水は、酸素が少ない水底の水です。この濾過装置は、見てわかるように、その水底の水をくみ上げています。そして、その水を濾過してから水槽に戻す時に、Bの位置から、薄く幅広く引き延ばしながら水槽に戻します。

ブクブクによる曝気では、空気の方を細かな泡にして、水面の面積を広げることで曝気の効率を上げていました。それに対して、この外掛け式濾過装置は、もっと直球で、水そのものを薄く引き延ばすことで、表面積を稼いでいます。

そして、ある程度の位置から水を落下させるために、Bから戻された水は、勢いよく水槽の中へと戻ります。結果として、酸素が豊富な水が、素早く水槽の中央へと押し込まれます。このため、外掛け式濾過装置は、濾過装置でありながら、ブクブクに負けないほど効率の良い曝気を行うことができるのです。

 

上面濾過装置

上面濾過装置の曝気金魚の水槽飼育でポピュラーな上面濾過装置にも、高い曝気能力があります。ただし、こちらの仕掛けは、外掛け式濾過装置のものよりも、若干複雑です。水の流れとしては、図中のAから水を取り込み、上部の濾過槽で濾過を行ったあと、Bから水槽に水を戻します。

酸素の少ない水底の水をくみ上げる点は、外掛け式濾過装置と同じです。濾過後の水は、パイプを使って水槽内に戻しますが、このときに、パイプの内壁を伝って水を落下させていることがポイントです。内壁を伝わらせているので、図を見ていただくとわかる通り、水面の面積は結構広くなります。さらに、このときに落下する水の勢いで、パイプの中心にある空気が、渦を巻くように巻き込まれながら流れます。このため、単純に水を落下させた時と比べて、より多くの空気と水面が接するようになり、曝気の効率が上がるのです。じつに良くできた仕掛けですね。

 

 

おまけ:体積と面積

ブクブクの解説でも述べましたが、同じ量の空気でも、細かい泡にすると、面積が増えます。でも、これは本当でしょうか。実際に、調べてみることにしましょう。

わかりやすいように、空気の塊を立方体として考えてみましょう。一辺が10センチメートルの立方体があったとします。このなかの空気の量は、10(cm)×10(cm)×10(cm)で、1000立方センチメートル、つまり1リットルになります。

体積と表面積1

この立方体の表面積は、一辺が10センチメートルの正方形が6面ありますので、10(cm)×10(cm)×6(面)で、600平方センチメートル、となります。

さて、この立方体を縦にスパリと切って、二つに分けてみましょう。

体積と表面積2

切り分けただけですので、空気の量(体積)は1リットルで、変化ありません。

対して、面積は、というと、灰色で示した面については、切り分ける前とまったく同じです。減った面積はありませんので、同じ600平方センチメートルです。

そして、切り口となった赤い部分に、新しい面が増えています。こちらの面は、上図のように切ったとしたら、一辺が10センチメートルの正方形二つ分となります。

新しく出来た面の面積は、10(cm)×10(cm)×2(面)で、200平方センチメートル、となります。

さて、そうしますと、一個の立方体を二個に分けると、面積は600平方センチメートルから、800平方センチメートルに増えることになります。

このようにして、立方体を細かく分割して、計100回切り分けたとすると、どうなるでしょうか。

一回切るごとに200平方センチメートルずつ増えることになりますので、 結果、なんと20,600平方センチメートルという、とんでもなく広い面積になるわけです。

上図では、わかりやすいように立方体で計算しましたが、理屈としては形が球形でも同じです。

というわけで、同じ量の空気であっても、細かい泡にするだけで、全体の表面積は、飛躍的に大きくなるわけです。